顧客の求めているものを知り、的確に対応すること。誰もがこんなことは当たり前だと思うかもしれない。しかしながら、現在ネットの浸透やネット利用者の増加で、その的確な対応に少なからずズレが生じている。古き良きマスメディア全盛時代においては、すべてのターゲットに認知させ、関心を持って購入アクションを起こしてもらうことが重要であった。それこそ、AIDMAの注意、関心、欲求、記憶、行動という流れは適確な実践理論であったと思われる。
その後、インタラクティブ時代に入り、ダイレクトメールや電話、ファックスなどでのレスポンス(反応)が重視されるようになり、1対1のOne to One Marketingの流れがやってきた。ネットが浸透すると、その流れはEメールやWebサイトの送信フォームによるコミュニケーションになった。これらの商品やサービスに関するお問い合わせやクレームなどは、お客様と企業の1対1の関係であり、大きな問題にならない限り、競合他社や市場全体に「お客様の声」が流れることはなかった。ところが、ブログや掲示板サイトに企業や商品に関して大量の書き込みがされるようになり、これが今までのマーケティングにも多大な影響を与えるようになった。
Web2.0の時代に入り、その利用しやすい環境や発信しやすいツールと匿名性によって、企業が出すメッセージに対するネット利用者の反応が、今までより過敏になってきた。そのため、企業が商品やサービスを販売するための一方的なメッセージでは対応しきれなくなってきた。また、企業が提供する情報が少なかったり、詳細な商品情報が無かったりすると、未購入者は既購入者の書き込みや感想に信頼を求めるようになってきた。お客様は今までにない賢い購入ができる環境を手に入れたのかもしれない。
つまり、購入者のお客様としての声(情報)は企業を通らず、情報として未購入者にどんどん流れていく。企業はもはやこの傾向を止めることも、気に入らない書き込みを、迎撃ミサイルのごとく1つひとつ潰すことも出来ないようになっている。ネット時代のアクションとして、前述のAIDMAのように、注意、興味、検索、購買、情報共有という流れがあるが、果たして、以上のようなWeb2.0時代において、企業のネット戦略や戦術はどのように考えればいいのだろうか。
今までのマーケティングとの大きな違いは、企業が、お客様がネットに書き込んだ自社商品や他社商品の情報だけではなく、市場全体の情報も見ることができるようになったことだ。どのように認知し、どのような興味を持ち、どのようなキーワードで検索し調べているのか。あるいはどんな書き込みに影響されているか。購入意思決定プロセスにおける既存購入者や未購入者などの書き込みや自社サイトのアクセスログを見れば、様々なことが理解できるようになった。
今まで企業は、同一市場の競合他社の動きや商品の開発において差別化を図ってきた。また、誰もがご存知の通り、企業のマーケティングとして4P、つまり、商品自体の差別化に加え、価格、流通、プロモーションに力を注いできたはずである。しかし、ネットはこの4つのPに大きな影響を与えるにもかかわらず、企業は企業サイトや商品サイトを単なる制作物としか見ていない。結局、お客様へのメッセージの出し方はマスメディア時代と何ら変わりがないと言っても良い。今後はこれら4Pすべてにネットの優位性をどのように組み込むかが大きな課題となるであろう。
個人のブログやSNS、あるいはコミュニティサイトでの書き込み掲示板など、個人の情報発信が容易になった。このネット環境は、実は企業においても同様であり、ビジネスブログやCMSを活用すれば、簡単に高頻度の情報提供が可能となってきた。しかし、個人の情報発信パワーに対し、企業は風評や不評の書き込みを恐れ、それらを調べることはしても、前向きにそうした情報を利用することはほとんどされていない。サイトリニューアルにおいて、競合他社のデザインやコンテンツを見て、「イイトコどり」しても、実は顧客が求めるコンテンツには永遠に辿りつかないのである。
市場や企業によっては顧客ニーズ調査や自社商品のリサーチよりも、ネット上の各種書き込みの方が顧客の求めている情報を把握できることもある。さらに、書き込まれた内容によっては、詳細な情報をサイトコンテンツとして素早くアップすることもできる。ある製品についてのネットの口コミを調べてみると、その商品に対する消費者の選定ポイント、必要としている機能や購入後のトラブル、購入前や購入後に知りたいと思う事項などを把握することができ、企業がそれらの情報を企業サイトや商品サイトに反映させることが十分可能な状態となっている。ネット上の書き込みを企業のサイトリニューアルに活かすことができる環境にあることを是非認識して頂きたい。これが企業サイト2.0の基本となろう。
Webマーケティングで競合他社に勝つ! Webマーケティングの7つの新潮流【7回連載】は今回で最終回となった。本連載で、今後企業サイトはどのようにすればいいのか、その方向性が見出せれば幸いである。なお、次回からは新たなタイトルで連載を継続させて頂くつもりである。